この人達に、年齢という概念は無いのだろうか。ロビンが68歳。トムが70歳。リックは72歳である。リックの息子ダックスのドラムがバンドに完全にフィットし「ドカドカうるさいパワー・ポップ・バンド」として新生した姿が収められた前作『ウィア・オール・オーライト!』に続き、またしても目の覚めるような傑作だ。
明らかに、70年代の黄金期に次ぐクオリティの作品を、当時と同等のエネルギーを込め、連発している。よく練られつつ彼ら「らしさ」が自然と出た、つまりファンであれば嬉しくないはずがない曲作りと、タイトで迫力ある充実の演奏が詰め込まれた本作を聴くと、本当にこの人達は時の流れを凍らせているのではないかと思えてならない。
まず、疾走感のあるオープニングから、ミディアム・ナンバー“Another World”で一度落ち着いた上で、先行曲にしてその名の通り無敵のロックンロール“Boys & Girl & Rock N Roll”へと繋ぐ前半の流れが完璧。後半では勢いを若干落ち着かせつつ、ブルースに挑んだ“Final Days”やジョン・レノン・マナーの佳曲“So It Goes”、ロックンロール・アレンジでの”Another World(Reprise)”などバラエティ豊かな楽曲で全く飽きさせることなく進み、ピストルズのスティーヴ・ジョーンズが参加したジョン・レノン“Gimme Some Truth”のカバーで美しくアルバムを締めくくる。大ベテランならではの高い構成力だ。
チープ・トリックはコロナ禍以前年間150本以上のライブを行っていたというし、この4月〜5月にかけてはストーン・テンプル・パイロッツとブッシュとのオーストラリア・ツアー、その後も来年までかなりの本数のスケジュールを組んでいる。この常軌を逸したタフさには、思わず憧れてしまう。(長瀬昇)
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