かつて「俺達はこの街に生まれ、ここで死んでいくんだ」と歌った地方都市のラッドくずれの少年達は、僅か2年の歳月を経ていきなり「万人のための音楽」を鳴らそうとした。主体から客体への急カーブ、普通に考えれば無謀な話だ。「ファーストの頃の俺達は若すぎた」とトム(現20歳)は言っているけど、冗談じゃない、彼らは今なお疑いようなく未熟で未完な超若造である。しかし、本作で彼らが証明してしまったのは確かに成長と言うより飛躍であり、そして驚くべき飛躍を遂げてなお、未だ彼らの人生とそれが地続きであるというパラドックスである。自分達が立つ街角が世界の全てなのだという誤解が、強引に他の街の、他者の人生をも巻き込んでいくロックン・ロール。あの国の少年達は、稀にこんな奇跡を起こしてしまう。(粉川しの)
ロックは少年を飛躍させる
ジ・エナミー『ミュージック・フォー・ザ・ピープル』
2009年04月22日発売
2009年04月22日発売
ALBUM
かつて「俺達はこの街に生まれ、ここで死んでいくんだ」と歌った地方都市のラッドくずれの少年達は、僅か2年の歳月を経ていきなり「万人のための音楽」を鳴らそうとした。主体から客体への急カーブ、普通に考えれば無謀な話だ。「ファーストの頃の俺達は若すぎた」とトム(現20歳)は言っているけど、冗談じゃない、彼らは今なお疑いようなく未熟で未完な超若造である。しかし、本作で彼らが証明してしまったのは確かに成長と言うより飛躍であり、そして驚くべき飛躍を遂げてなお、未だ彼らの人生とそれが地続きであるというパラドックスである。自分達が立つ街角が世界の全てなのだという誤解が、強引に他の街の、他者の人生をも巻き込んでいくロックン・ロール。あの国の少年達は、稀にこんな奇跡を起こしてしまう。(粉川しの)