ヒップホップ界きってのヒットメイカー、DJキャレドにとって、新作アルバムのリリースとは、豪華なセレブ・ゲストを集めた「パーティ・イベント」である。全米アルバム・チャートで初登場1位を獲得した本作でも、ゲストの面子は超豪華。ジェイ・Z、ジャスティン・ビーバー、ドレイク、ジャスティン・ティンバーレイク、カーディ・B、リック・ロス、H.E.R.、ナズ、パフ・ダディ……って、まだ半分も行ってないので、あとはどこかで調べてください。
そんなわけで、どうしてもゲストの豪華さばかりが話題にされがちだけど、DJ キャレドがヒット曲を連発する真の理由は、ヒップホップ・ファンのみならず、あらゆる人の耳に瞬時にアピールできる、スーパー・キャッチーな楽曲を作れるからである。
そのためにはロックの名曲からネタを引っぱってくることも多く、ポスト・マローンらが参加した“I Did It”では、なんとデレク・アンド・ザ・ドミノスの“いとしのレイラ”をサンプリング。しかもクラプトンの歌部分ではなく、いちばん気持ちのいいギター・リフのパート(ドゥルルルルルル〜♪のとこね)のみ使っている。ロック史的な文脈なんか無視して、純粋に音としての「快感」だけを追求するセンスが、実に2021年的なのだ。
もちろんヒップホップ的な聴きどころも満載で、中でも感涙ものなのは“Thankful”。昨年コロナウイルスに感染し、一時は人工呼吸器まで付けながら、奇跡的に回復したジェレマイと、ラッパー人生で「天国と地獄」の両方を味わったリル・ウェインを組ませた時点で勝ちは決まったようなもんだけど、そんな夢のキャスティングを、自身の新作アルバムの1曲目にさくっと持ってきちゃうなんて……DJキャレドの「人脈」、やっぱ凄すぎです。(内瀬戸久司)
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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