これこそが歴史的名盤

クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング『デジャ・ヴ~50th アニヴァーサリー・デラックス』
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ALBUM
クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング デジャ・ヴ~50th アニヴァーサリー・デラックス

いわゆる「絶対的名盤」である。歴史的な重要度、音楽的な完成度、楽曲の質の高さなど、すべてを兼ね備えた完璧な作品。ニール・ヤングが参加した曲はアルバムの半分のみ、個性も主張も強い各メンバーのソロを集めたような作品なのに4人のパワー・バランスがパーフェクトに整った、奇跡のようなアルバムなのである。ここで取り上げるのは最新リマスターを施したオリジナル・アルバム10曲に加え、デモ、アウト/オルタネイト・テイクなど38曲、計48曲がCD4枚に収められたボックス・セットで、それにオリジナル・アルバムのヴァイナル盤が同梱される。

楽観的で開放的な明るさと親密さ、ポジティブさに彩られたCS&Nの1stに対して、本作は翳りを帯びている。本作のセッション中にスティルスはガールフレンドだったジュディ・コリンズと別れ、ナッシュはジョニ・ミッチェルと別れ、そしてクロスビーは昔からの恋人を交通事故で亡くした。その影響はアルバムに影を落としている。それはまるでラブ&ピースの60年代からシラケと空虚と喪失の70年代という時代の変わり目を象徴しているかのようである。

本作のディスク2では、まだ恋人同士だった頃のナッシュとジョニが“僕達の家”をデュエットしている。ナッシュがピアノを間違うとジョニがケラケラと楽しそうに笑う。まだ20代後半だった2人の仲睦まじい様子は、二度と戻らない輝かしい青春そのものであり、それは同時にまだ発展途上だったロック音楽そのものの若さでもあって、なんとも甘酸っぱい思いに囚われるのだ。そのジョニ作の“ウッドストック”は、ハードなギター・ロックで、輝かしい理想郷としてのウッドストック、60年代カウンターカルチャーへの強い肯定を歌う。ジョニ・バージョンの、シンプルで寂寥感に満ちた世界とは対照的だ。

ディスク1のオリジナル・アルバムのリマスターは、以前のCDよりもメリハリが効いてクリアになり、かつフラットでバランスのいい聴きやすい音になっている。ハイレゾ音源同士で聴き比べても差は明らかだ。

ディスク2のデモ・テイク集は、オリジナル・アルバム収録曲、未発表曲、後に各メンバーがソロ・アルバムなどで発表する楽曲などが収められている。ほとんどがシンプルな弾き語りに近いもので、なかには4人が初めて集いレコーディングした時のテイクも収められている。

CSN&Yによるアウトテイクを集めたディスク3、オリジナル・アルバム収録曲の別テイクを収録したディスク4はそれ以上に興味深い。ジェリー・ガルシアのペダル・スチール・ギターが入らない“ティーチ・ユア・チルドレン”や、ニール・ヤングのハーモニカをフィーチャーした“ヘルプレス”など。自分のところで発表するつもりなのか、ニール・ヤング関連の音源が少ないのは残念。

あまりにもオリジナル・アルバムの完成度が高すぎるから、その他のテイクはすべておまけに過ぎない、とも言える。だがその絶対的名盤の成り立ちをより深く理解するには好適なボックス・セットだ。(小野島大)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング デジャ・ヴ~50th アニヴァーサリー・デラックス - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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