気が付いたらこの重厚な迫力

ザ・ブラック・キーズ『デルタ・クリーム』
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ALBUM
ザ・ブラック・キーズ デルタ・クリーム

ザ・ブラック・キーズ5年ぶりのオリジナル・アルバムだった19年の『“レッツ・ロック”』以来、2年ぶりとなるのが本作。19年に『“レッツ・ロック”』のツアーに乗り出したものの、その後、20年に入ってコロナで頓挫。それ以来の新作となるが、実は今回はカバー・アルバムで、ダン・オーバックとパトリック・カーニーのふたりが若かった頃から大きなインスピレーションとしてきた、ブルース・ミュージシャンのジュニア・キンブロウを軸としたものになっている。

ジュニア・キンブロウの曲はどこか粘っこいグルーヴを生み出すギター・リフと荒々しい演奏を身上とするブルースマンで、その直系の後継者にジョン・スペンサーとのコラボレーションでも知られるR.L.バーンサイドらがいる。もちろんダンとパトリックは今回、バーンサイドの楽曲も取り上げている。

実はデンジャー・マウスと出会って転機を迎える以前の06年にも、ふたりはジュニア・キンブロウのカバーEPを制作しているが、今回はスライド・ギターのケニー・ブラウンとベースのエリック・ディートンという、ジュニアのバンドを務めたふたりも従えて、2日でレコーディングを仕上げたという気合いの入った内容になっている。同じカバー・アルバムでも、06年の時とは理解の深さやパフォーマンスの爆裂加減などでは比べものにならない。

では、なぜ今ジュニア・キンブロウのカバーなのか。これは明らかに原点回帰なわけだが、コロナ禍がいいきっかけになったのかもしれないし、あるいは5年のブランクを経て『“レッツ・ロック“』で活動再開した直後だっただけに、ちょうど良いタイミングでもあったのかもしれない。いずれにしても、06年時とはまったく別物の、圧倒的な説得力と自信が今回のカバーで最も際立ってくるところで、この貫禄にしびれる。(高見展)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

ザ・ブラック・キーズ デルタ・クリーム - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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