TVドラマ『にじいろカルテ』主題歌“旅路”に続き、Honda「VEZEL e:HEV」のCM曲として書き下ろされたシングル曲。この2021年に発表された2曲は、少なくとも僕の中で藤井 風というミュージシャンに抱いていたイメージを大きく上書きする作品になった。ハイレベルで濃密な音楽的素養と、デビュー時から記名性の高いクリエイティビティを発揮してきた彼は、たとえばタイアップ仕事などにおいてその強烈な個性が過剰に際立ってしまうのではないか、と思い込んでいたのだ。しかし“旅路”も、そして初のCM曲となった今回の“きらり”も、溜息が漏れるほど見事にタイアップ曲としての目的を果たしている。提示された「GOOD GROOVE」というテーマは、作りたいと思っていた曲のイメージと合致していたことが「ねそべり配信」でも語られていたけれども、ディスコビートの軽やかな推進力でドライブのイメージを描くだけでなく、最高にロマンチックな物語を綴って歌い、今鳴らされるべき「GOOD GROOVE」を定義している。テーマと音楽、思考と肉体を完璧に同調させた1曲だ。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』7月号より