藤井 風という才能の出現について

ここ数年、特に米津玄師あいみょんKing Gnuらが日本の音楽シーンのトップランナーとなっていく様を見て、ポップスとロックの関係が大きく変わったのを感じた。
ロックがその洗練度や戦略性やインパクトを高めることによってポップスを凌駕してヒットを生み出す、そんな時代は終わった。
どうやっても自分から逃れる術がないから、迷いなく自由に自分にしかできない音楽を極めるしかない。
そんな今の時代なりのロック・アーティストとして強い「個」と「孤」を持っていることが、今の時代なりのポップスとしてのしなやかさと普遍性に繋がっている。
それがヒットを生み出す。
いや、これは最早ヒット=売れることが、純粋に多くの人の心を動かし、何度でも聴きたいと思われることの副産物に過ぎない時代になったことの顕れなのだろう。

そして藤井 風の登場である。
YouTubeのピアノカヴァー動画でその名を知られるようになった彼だが、洋楽、椎名林檎、”おどるポンポコリン”まで、どのカヴァーもその楽曲の音楽として一番美味しいエッセンスを丁寧に余すことなく絞り取りながらも、逃れようもなく藤井 風の音楽になってしまう。
1曲もオリジナル曲を聴いてなかったとしても「藤井 風」というジャンルをピアノと歌だけではっきり感じ取ることができる。
プレイヤーとしてもシンガーとしても技術は高いけれど、そこに耳が行く前に、心が藤井 風の持つ「個」と「孤」に震わされるのだ。

そして今のところリリースされているオリジナル曲は"何なんw””もうええわ””優しさ”の3曲。


1曲聴くたびにピアノカヴァーで感じていた藤井 風の生身の「個」と「孤」の正体に迫っていく感じ。
音楽によって常識からはみ出すのではなく、常識からはみ出して生きたところに必然として音楽があった。
そこで同じようにはみ出した心を抱えながら藤井 風と出会えた人が日本中に拡がったなら、2020年の最前線のポップ・ミュージックの誕生というわけだ。
5月20日、ファーストアルバム『HELP EVER HURT NEVER』が世に出るのが本当に楽しみ。(古河晋)
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