ブルーにこんがらがって

米津玄師『Pale Blue』
発売中
SINGLE
アルバム『STRAY SHEEP』以来となるリリースで、とりわけ表題曲と“ゆめうつつ”の2曲は、国民的アーティストとしての重圧や責任感を背負った素晴らしいナンバーになった。ドラマ『リコカツ』主題歌“Pale Blue”は、コメディ要素も強い脚本から情緒的な一人称ラブソングとしての本質を抉り出し、米津が体ごとのめり込む《ずっと 恋をしていた》のフックが各話のクライマックスに映える。拍子を可変させた最終センテンスによって、恋の終焉から新しい物語の立ち上がりを予感させる手法もすごい。余談だが、「緒原家家訓の台紙」と「スウェーデン製カーテン」という劇中重要アイテムの色彩がペールブルーで揃った瞬間には、思わず感嘆の声が漏れた。

『news zero』テーマ曲“ゆめうつつ”も待望のフル音源である。ジャジーなヒップホップビートの上で、悲喜交々の物語が飛び交う街をなだめるように優しく歌われるララバイを堪能してほしい。そして新曲“死神”は、同名の落語演目から死神の呪文を引用した奇天烈なポップソングに。ダークさとコミカルさが綯い交ぜになった米津節が全開だ。(小池宏和)