BIGMAMAが鳴り響かせるサウンドは、爽やかな高原の空気を胸いっぱいに吸い込んだかのような感覚をたくさん届けてくれる。草木の瑞々しい香り、青い空、見晴らしのいい景色などは、彼らの曲に耳を傾けながら多くの人が思い浮かべるイメージではないだろうか。そして、このような音に彩られた言葉を噛み締める体験は、心を自ずと上向かせてくれる。“Let it beat”は、そういう魅力を再確認できる曲だ。いきなりピリオドを打つかのような《もう無理これでお終いだ》から始まるのでかなりドキリとさせられるのだが、その直後に続くのが《そう思ってからがはじまりさ》なのが面白い。ネガティブ風のフェイントを経るからこそ、試練に対して怯むことなく進んで行く姿勢を綴ったその後の言葉たちが一際温かく迫ってくる。独特な仕掛けが醸し出している穏やかなムードは、ぜひ実際に聴いて確かめてほしい。最愛の人に一世一代の言葉を届ける“Wind in her hair”、現在のメンバー編成で新録された“セントライト”――カップリング曲も気持ちいい。心の深呼吸をじっくりとさせてくれるシングルだ。(田中大)
『ROCKIN'ON JAPAN』5月号より