Ochunism(オチュニズム)という奇妙なバンド名は、バンドの発起人のひとりであるちゅーそん(G)が描いていたSF漫画のタイトルらしい。このエピソードの時点で私はサイケなセンスをこのバンドに感じるのだが、音を聴けばたしかに、この新鋭はポップミュージックの楽しさや華やかさだけでなく、狂気的な側面まで表現できるバンドである。
2019年に大学のサークルを中心に結成されて以降、関西を拠点に活動してきた6ピースバンド(メンバーにはサンプラー担当もいる)。この“夢中”は、メジャーデビュー作となる配信シングルである。インディーズ時代の作品でも、現実と非現実の狭間に聴き手を誘うような深い世界を曲毎に音楽化していたバンドだが、この楽曲でもセクション毎に各楽器の旨味とアンサンブルの妙を生かし、一曲を通して豊かに物語を描いている。
物語の軸になるのは凪渡(Vo)による歌と、夢の中でしか叶わない想いを綴った歌詞。悲しくて笑えてくるほどの叙情が、モダンなバンドポップサウンドの中で濡れている。可憐。なのに、毒のある花のような一曲である。(天野史彬)
毒のある花のようなバンドポップ
Ochunism『夢中』
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