音楽には、作者が自分自身のために生み出し奏でるものもあるけれど、いわゆるポップミュージックとして世に出てくるものの大半は人と人との間に置かれるべく生み出され、奏でられるものだ。indigo la Endの2023年最初のリリースとなったこのデジタルシングル曲は、昨秋の日本武道館公演「藍」でアンコールを締め括る楽曲として初披露された。憂いを帯びながらも軽快に鳴り響くビートポップは、《曖昧な関係の名前は片想い》というコーラスで離別の決意を固めるように力強くドライブする。歌の中の主人公は、《あなた》に思いを寄せ距離を縮める過程で本来の自分を見失い、《あなた》を縛りつけている現実に気づくのだが、そんなチグハグで哀しい関係性の中にこの曲は鳴り響いている。特にすごいのが、チグハグさの中で今にも壊れそうな心模様をありありと描き出す第2コーラス後の間奏。indigo la Endのスリリングなこと極まりないアンサンブルは、そこでこそ本領を発揮する。キャッチーな整合性を保ったまま、不安定な関係性を「片想い」と名づけ、次フェーズへと進むために背中を押す一曲。(小池宏和)
(『ROCKIN'ON JAPAN』4月号より)
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壊れそうな関係性を名づけること
indigo la End『名前は片想い』
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