坂本真綾11枚目となるフルアルバムは、前作『今日だけの音楽』に続き、多彩なクリエイターを招いたコンセプトアルバム。「人々の記憶を管理する巨大な図書館で、廃棄された記憶を回収する少年」を主人公に、少年が覗いたさまざまな「記憶」にまつわる12曲が収録されている。
荒内佑(cero)作曲・編曲の“ないものねだり”のファンタジックなオープニングから、優しく温かい歌声が「日々の中で忘れてしまった気持ち」や「忘れたい思い出」などにそっと触れていく。希有なシンガー、作詞家としての表現力が堪能できるのはもちろん、「記憶」というコンセプトを通して、彼女自身が時を超えて自分の内に潜っていくような生々しさがスリリングでもある。特に、tricotが作曲・編曲・演奏を手掛けた変拍子オルタナロックで《命を 使い切ってしまうわ》と歌う“一度きりでいい”、坂本慎太郎作詞&冨田恵一作曲・編曲の妖しいポップスに乗せて深淵を覗き込む“鏡の中で”は、美しさの中に滲む少しの毒に痺れた。そして、ラストは岸田繁作曲“菫”の圧倒的包容力に抱かれて終わる。刺激と癒しに満ちた一枚。(後藤寛子)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年7月号より抜粋)
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記憶を旅する12曲
坂本真綾『記憶の図書館』
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