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“うっせぇわ”のソングライターとしても知られるsyudouの初の全曲本人歌唱によるフルアルバム。曲毎どころか1曲の中でもリリックの内容に合わせてコロコロ変化していく千種万様のボーカリゼーションを用い、自身を含む360度に向けて毒づきながら、《他の追随など許さん程モテてぇんだ/そこらの並とは比べんな》(“アンチテーゼ貴様 -改-”)や《そう俺は見せるだけだ 富と名声を得る過程/出禁食らう程に下品に円を貯めるエンタメ》(“ギンギラギン”)など、自身の進む道をヒップホップ的な作法で対象化し歌い上げてしまう様が痛快だ。一方で作中最も(他の曲と比べれば、だが)ストレートなポップソングである“恥さらし”では《生きる痛みに意味があると言える/言い訳はありますか/俺にとっては音楽がそうだ》とその胸の内を吐露していたりもする。つまり、周到に研ぎ澄ました毒針がこの音楽に仕込まれる理由が、表からも裏からも歌われているのだ。自らのスタンスをはっきり示した、まさに名刺代わりの一枚である。(長瀬昇)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
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