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本誌8月号の「SCENE」にて最速レビューを書いたのだが、当時は映画『キングダム 運命の炎』の予告編にて解禁されていた1コーラスにしか触れることができず、これについて語りたい気持ちをグッと堪えていた。ピアノと歌が主体の前半も、宇多田ヒカルならではのきれいなビブラートと、声の重なりやリバーブが美しいサウンドデザインに惚れ惚れするのだが、後半のA. G. Cookの記名性あるビートへの言葉の乗せ方に、母音に繊細な宇多田の技を見る。曲を聴き返してみてほしい。《いつか起きるかもしれない悲劇を》から《誰のものにもならないGold》までは各フレーズの文末の母音が主に「お」(と所々「え」)になっていて、ビートがアグレッシブになると同時に「う」と《な「ら」ぬ》《うる「さ」い》など「あ」がアクセントとなり、渦が巻き上がっていく中でも《たし「か」そん「な」は「ず」》《You are》と「う」と「あ」が繰り返されて、ドロップで「お」に戻る。母音の操り方でテンションや音の渦をコントロールする巧みさに感服。(矢島由佳子)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年10月号より抜粋)
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