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2015年の『androp』以降、タイトルの頭文字をアルファベット順に名づけてきており、今作は「g」。『gravity』=「重力」である。常に存在し、我々が地上にある限り影響を受け続ける事象として重力を捉えれば、へビーな作品性でもおかしくはないがしかし、今作の印象はむしろその逆。無常感や諦念はほぼなく、ネオソウルな音にのせた独白調の“Black Coffee”にやりきれなさが滲むくらいだ。アルバムの幕開けを飾る“Parasol”の弾むギターポップに、90'sのマンチェスターを彷彿とさせるダンサブルな“Hyper Vacation”。“Happy Birthday, New You”のカラフルでドリーミーな音像。どれもごく軽やかに鳴っている。歌詞に目を向けると、焦点はあくまで「君と僕」に置きながらも、重力とは対照である「宇宙」やそれに付随する単語が何度も登場。そのポジティブな筆致は、重力からの解放すら思わせる。《讃えあおう 歌いあおうぜ》と祝福するのは“Toast”。存在する限り抗えない重力と同じくどうしたって続いていく日常を肯定する、彼らの眼差しは優しい。(風間大洋)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年10月号より抜粋)
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