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「新しい普通」を見つめた金字塔『新しい果実』から約2年半。新譜『Almost there』はラップやトーキングブルース調の歌唱、ソウル/R&B的アプローチ等で前作を踏襲しつつも、電子音を纏うヘビーなサウンドに、何語を聴いているとかの概念から離れた不思議な響きの関西弁を乗せた新機軸“雀の子”も含め、全体を通して歪んだギターの存在感が際立つ仕上がりに。その中で異彩を放つ肉体的なダンスナンバー“実はもう熟れ”のタイトル、そして”Ub(You bet on it)”の《新しい果実には当然/熟す時が訪れる》《熟れすぎたのは 是か非か》という問いが示す、前作からの時間経過への田中和将の思いは明示されないが、“アマテラス”や“Goodbye, Annie”のシニカルな視線と言葉にハッとさせられ、《限られた人生ぶっ飛ばして行こう》と掲げる“Ready to get started?”に胸躍るのは確か。あれから社会の、私たちの、何が変わり何が変わらないのか。ライブの光景が元に戻りマスク姿の減った2023年秋に届いた傑作ロックアルバム。(風間大洋)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年11月号より抜粋)
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