パワー・ポップの魔法

ティンテッド・ウィンドウズ『ティンテッド・ウィンドウズ』
2009年05月13日発売
ALBUM
ティンテッド・ウィンドウズ ティンテッド・ウィンドウズ
この新バンドに関する第一報が届いた時には、誰もが冗談みたいなラインナップと感じただろうが、だからこそ妙な企画先行などではなく、本当に自然な成り行きでなければ誕生しえなかったバンドだとも思う。今月号に掲載されたインタビューを読めば分かる通り、着想の段階からメンバー自身かなり明快なビジョンを持っていて、それを現在のシーンに提示したいという意識もしっかりあったようだ。アルバムをサッと聴いただけでも、その気概は何となく伝わってくるし、40分もないアルバム・サイズも確信的。何より「バズコックス、ザ・ナック、チープ・トリック」というのは、かなり鋭いところをついていて、そうした狙いが作為的なレベルにまで辿り着いてしまっていないところこそ、最も成功した点ではないだろうか。

個人的にハンソン・ブラザーズと言えば、先ごろ来日したノーミーンズノーのサイド・バンドを思い浮かべる人間なので、ボーカリストについては「ん〜、バッ☆」という曲しか知らなかったのだが、基本シュガー・テイストだけれどスパイシーな味も持ち合わせた声質はズッパマリだし、イハについても初めてギタリストとして褒めてやりたいと思えたし(すみません……)、実際こりゃあ相当ヤられたなと、悔しいけど正直、認めざるを得ない。

こういうアルバムに、まずは女の子たちがワーッと、続いて男子どもが「ふーん、なかなかやるね」と慎重な態度を見せながらも群がっていくような光景が、再び洋楽シーンに呼び起こされてくれたら嬉しいと自分も心から思うので、このバンドのことは素直に応援します。(鈴木喜之)
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