『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
《外出た瞬間 終わったわ》(“強風オールバック”)、《寝起きヤシの木/どうすべき》(“寝起きヤシの木”)、《私いま ぶたさんだ》(“ブタサンダー”)。イントロがないどころか開始わずか5秒でリスナーの耳に強烈な印象を叩き込むボカロP・ゆこぴは、数々のチャートで上位を記録し2023年のボカロシーンを席巻したといっても過言ではない。小津が手掛けるボーカロイド・歌愛ユキのアニメーションを用いたMVの愛くるしさも相まって“強風オールバック”現象は巻き起こった。『アルバム1号』と題された今作には、人生とはつまりそういうもんだと言わんばかりの“カニを求めて”やエモーショナルなサウンドで目薬の効能を歌う“ズィー”などの新曲も収録。一貫してゆこぴが奏でるのは、人々の生活に寄り添う「何か」ではなく取るに足らないものばかり。それがなぜこれほど愛されるのか。それは、ここ数年社会を取り巻いた出来事から人々の心にどうにかこうにか隙間が生まれ、その隙間を埋めるように他愛もないことを愛せるようになった証なのだ。(橋本創)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年2月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』2月号のご購入はこちら