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10周年を迎えたタイミングでのレーベル移籍、メンバー憧れの地・ロンドンでのレコーディング、1stアルバムと同じタイトルを冠した新曲――否が応でも期待値が上がってしまう情報が並ぶ今作。どんな曲だろう、やはり彼らのルーツを感じる、UKロックを彷彿とさせるような曲だろうか、とドキドキしながら再生してすぐ、その予想は鮮やかに裏切られた。そうだ、バニラズはそんな安易な原点回帰はしないし、かといって突拍子もない新要素を加えることもしない。牧の歌声は変わらずナチュラルさと鋭さが同居する妖艶な魅力を放ち、サポートピアノを含めた各パートは、派手に主張するわけでないのに驚くほどそれぞれの粒が立っている。都会の夜を思わせる華やかなテイストにはバニラズの新境地を感じるが、そのサウンドを作る彼らはあくまでいつも通り。曲を聴いて「このバンドっぽい」と思わせるのはきっと難しいことだが、バニラズはそれをさらりとやってのける。10年という時間を実直に積み上げてきた結晶の音だ。(藤澤香菜)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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