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昨年8月に「こころが終わりそうだったので一曲作った」という一文とともに弾き語りでポストされた曲が、1月1日に正式リリースされた。『紅白歌合戦』にて話題を掻っ攫った直後に、光の裏にある影も見せることを厭わない動きだと思った。“YOU&愛Heaven”では、《ひとつ手にしてふたつ手放す》《ずっと前から怖かった/このまま進んで逆さまになること》など、彼女の本音の吐露と読めるリリックが続くのだ。「第一線で活躍中」などと外野が言うのは気楽だけど、その立ち位置はとても脆く繊細で、そこに立ち続けること、さらにはそこでもらいたい評価をもらいたい人から受け続けることは、とても息苦しい。それならいっそ自分で《全部 壊しちゃえば》という気持ちになる瞬間もあるだろう。《もう離さないわ》《ひとりじゃないから》などの言葉に「絶対」はないけれど、音楽の中でギターをかき鳴らしながら叫べば、不確かなことも力強い包容力となって伝わるときがある。3分半の間で痛みを優しさへと変えるソングライティングに、anoの音楽への姿勢や信念が滲み出ているように感じた。(矢島由佳子)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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