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自身を「研究者」と称するWurtSの実験精神が編曲でもこれほど暴れ回るとは――と唸らされた。これまでの彼のアレンジにあった「全楽器一斉射撃」みたいな豪胆なアプローチも気持ちよかったのだけれど、“SF東京”では各パートが明確に別のトーンで描き分けられていて、異常に音がデカい肉体的なスラップベースと穏やかなエレピが生むアンバランスな調和が、不思議な安心感を与えてくれる。夥しい数の人/コンテンツに接触することでかえって孤独と虚無感が強調される「東京」という病に侵された僕らに向けた子守唄のように。WurtSはリアルとフィクションの間を揺らめく幻影のような、実に「SF」的なアーティストであると感じるかもしれない。しかし、独特な言葉の配列が生む難解なイメージの影をそっと辿ってゆけば、その奥にはどこまでもリアルな人肌がある。この曲のアレンジの最高到達点で《僕は手を引っ張って/あなたに笑って欲しいから》と歌うWurtSは、他のどんなアーティストよりも強い目で僕らを見つめている。(畑雄介)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年4月号より抜粋)
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