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都市の極北の風景も、報われることなくささくれた時代の焦燥も、The Birthdayでのチバユウスケは一貫して無垢な愛を通して見つめ続け、虚飾なきロックンロールとして響かせてきた。ロックンロールのカオスと狂騒を誰よりもリアルに体現し体感した唯一無二の表現者だからこそ、相も変わらずくそったれな世界で翻弄される孤独な魂を愛とロックンロールで抱きしめ続けることの意味を痛感していたのだろう。昨年11月に逝去したチバが生前にレコーディングを済ませていた3つの楽曲が、フジイケンジ/ヒライハルキ/クハラカズユキによる最終作業を経て、EP作品としてのリリースが実現。日常と追憶、平穏と狂気が自然にカットアップされるミディアムバラード“サイダー”。ソリッドなリフと《俺のハートを撃ち抜いてくれよ/君のかわいいピンクの愛で》のリフレインが衝動を震わせる“S.P.L”。そして最後、“I SAW THE LIGHT”の《光を見つけた/光をつかんだ》の絶唱で、世を去った「光」の偉大さが改めて胸に迫る。(高橋智樹)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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