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Netflix映画『パレード』のサントラに続く、野田洋次郎名義での新曲。RADWIMPSでもなく、illionでもない、正真正銘の新たなアウトプットとして、野田洋次郎が動き始めたことを感じさせる覚醒感のある1曲である。生々しさと浮遊感が混ざり合うトラック。野田の歌声は、叫ぶのでもなく、諭すのでもなく、宇宙を旅する旅人が静かに自らの運命を語るような不思議なトーンを持っている。かつて“追憶 feat. Yojiro Noda”でも共演したkZmのラップは、そんな野田の歌に対し対立とも同調とも違う絶妙な距離感で存在している。《神がかって光る まるで花火 あとになってわかる 俺ら奇跡》――その歌詞が綴るのは、答えも、正解もなく、あるのは「今」だけなのだということ。言葉の背後に浮かび上がる「死」という現実が、この歌が野田の人間としての確かな実感のもとに綴られたものであると伝える。飾り立てない温度感ゆえにすんなりと入ってくるが、その実、もたらされるのはまったく新しい音楽体験である。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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