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ヨルシカの音楽は人生の裏路地に通じている。ひとりきりの寂しさや、失ってしまったものの記憶、埋まらない喪失感や欠落たちが佇むその場所を、ヨルシカの音楽は時に爽やかな風のように吹き抜け、時に甘い色香を放ちながら彩る。今日の続きとしての明日を当たり前のように待ちわびることができない人々は、だからヨルシカの音楽の中で待ち合わせをして、孤独の味わいの中で踊る。この新曲“ルバート”はうってつけだ。時間の流れの狭間で私たちを寄り道させるような、甘美で退廃的な美しさが滲む。ホーンやピアノも繊細に響く情感豊かで魅惑的な楽器の重なりに身を預ければ、ズブズブと沈むように踊ることができる。奔放に羽ばたくsuisの歌声も素晴らしい。「ルバート」とは「自由にテンポを変えていく」という意味で使われる音楽用語だが、語源はイタリア語で「盗む」を意味する「rubare」にあるという。奪われたもの、奪ったもの。かつて『盗作』を作ったヨルシカの表現のテーマにもつながっているようで、興味深い。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
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