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賛美歌のごとく優しい佇まいを背に、突き抜けるファルセットが螺旋状に連なる音塊の渦の中心を、そして聴く者のもっとも柔らかくて核となる部分を一突きで貫き酩酊状態に陥るような――槇原敬之と絢香を迎えた冒頭“Yomigaeri”にはここ数年世界を舞台に闘ってきたビッケブランカの人生の機微がつぶさに詰め込まれている。「よみがえり」という言葉をあえてローマ字表記にしつつ、日本特有の文学性を携えた歌詞を乗せた今作は、日本と海外という枠組みさえも飛び越え新たな境地へたどり着いたことを物語っている。続く“Snake”は間違いなく彼の思考に、表現に変革と確信を与えた意欲作にして代表作と呼べる1曲。そして“Never Run”はアルバムタイトルを象徴する渾身のダンスチューンだ。新曲としては他にも、持ち前のポップユーモアが躍動する“High Love”、雨上がりのような質感がみずみずしいバラード“またね”などを収録。変化のうねりにリスナーの感性ごと巻き込むビッケブランカの音楽性は、いまだ底知れない。(橋本創)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号より抜粋)
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