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一瞬で過ぎる「今」に「永遠」や「運命」を問い続ける“マテリアル”(2022年)、そしてもう交わることのない線対称な存在である君を思う“シンメトリー”(2023年)と、この季節のおいしくるメロンパンのシングル曲には夏の儚さと消えない追憶とが色濃く映し出される。今回の“渦巻く夏のフェルマータ”もまた、水を抜いたプール、海、水色と、彼らが継続して用いるモチーフを踏襲しながらひとつの季節の終わりを描き出している。フェルマータとは音楽用語で、音符や休符を奏者の感覚によって「ほどよく伸ばす」というような意味合い。その曖昧な定義とこの楽曲が持つ幻想的な時間感覚とが妙に重なる。ナカシマの穏やかなファルセットと訥々と響くアコギの音、そして轟のようなバンドサウンド。その音の満ち引きからも抗いようのない時の流れを感じてしまう。彼らが描き続ける記憶のプールと海のイメージは作品を追うごとに何度も見る明晰夢のごとく鮮明になっていくが、この楽曲はその世界観を強く印象付けるものとなる。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号より抜粋)
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