そう、ランシドがランシドである根拠は6年ぶりの本作においても寸分たりとも揺らいでいない。しかし、その「揺らぎの無さ」とは品質保証の安心感であったり、手癖を良しとする金太郎飴的な不変とは全く意味が違う。ソングライティングをアコースティック・ギターで行っていることも大きく作用しているのだろう。自分達の定型をアコギの繊細な旋律に置き換えることで一旦細かくほぐし、細部をひとつひとつ吟味した上で、再び編み直したようなストイシズムが漂うのだ。だから、変わっていないのに、凄く変わっている。いや、彼らは変わらないために、ストイックであり続けるのだ。パンクのアティチュードを守ることは伝統芸の継承とは違うのだということが、本作を聴けばすぐに理解できるはずだ。ボブ・ディランみたいなことになっているアコギ・ナンバーも素晴らしい。
お金に余裕があるファンはデラックス盤をゲットして。12曲ものアコースティック・ナンバーが収録されたCDが付いてくる。ランシドのメカニズムを理解する上でも、このアコギ盤は非常に重要。(粉川しの)