めちゃくちゃな子供達のために

ディアハンター『マイクロキャッスル』
ディアハンター マイクロキャッスル
このアルバムを聴いていると、スペースメン3の音源タイトル「For All the Fucked Up Children of This World」という切なくも虚無的なフレーズが浮かぶ。それは80Sゴス・パンク、ミニマルなドリーム・ロック……と作品ごとに音楽性をシフトしメンバーも変動〜煽動/露悪型ライブで話題を呼び、と色んな意味で「めちゃくちゃ」なディアハンターの中心人物:ブラッドフォード・コックスの奇妙な面影がだぶるからかもしれない。世界に中指を突きつけ、敵意と負を糧に生きる人?しかし、本サードは癒しを希求したレコードという意味でポジティブに響く。感覚を溶かすリバーブ、位相を揺らすサウンド・コラージュとコーラス。陶酔に満ちた音作りは綿アメの雲中を航行する甘美さで、メロディは母親の胸のように柔らかい。実在しないからこそ美しいこの夢幻なポップ・ビジョンは、(ブラッドフォード自身も含めた)破綻した子供達に捧げる子守唄なのかもしれない。スタイルの模倣で終わっているいわゆるネオゲイザーの多くは好きになれないが、“ここではないどこか”を作り出してしまう、このバンドは本物だと思う。(坂本麻里子)
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