世界で最も硬い原石

リンキン・パーク『デモ・トラックス』
2009年12月23日発売
ALBUM
リンキン・パーク デモ・トラックス
今作の“サッド”“フィアー”“ドローイング”と称されたトラックが、それぞれその完成形である“バイ・マイセルフ”“リーヴ・アウト・オール・ザ・レスト”“ブレイキング・ザ・ハビット”と比較するまでもなく、それ自体が原石どころかすでにダイヤモンドの輝度と硬度を誇っていることに、ロック・リスナーは驚愕&狂喜し、プロアマ問わず音楽を作っている人は軒並み頭を抱えるに違いない。そういう1枚だ。

もともとこのデモ・トラック集は今年5月にリリースされたレア・トラック集『ソングス・フロム・ジ・アンダーグラウンド』同様、リンキン・パークのファンクラブ向けCDとして企画/制作された1枚。「2010年のニュー・アルバムに向けて制作中のため、スタジオの雰囲気を捉えた内容にしたい」と、“ラナウェイ”の98年録音のデモから“アクロス・ザ・ライン”と題された未発表曲の07年デモまで超貴重音源を計9曲にわたって惜しみなく収録。とはいえ、この9曲にしたって「いい曲できた!」と胸を張ってリリースするバンドがいてもおかしくないレベルの圧倒的なクオリティなわけだが、メンバー自らそのフレーズやアイデアの1つ1つに至るまで説明責任を果たしていくような赤裸々で真摯な姿勢には思わず震えがくる。そして、ダイヤモンドをさらに鍛え上げてロックとしての無敵の剛性を生み出していくリンキンのバンド・マジックの核心は「その先」の領域にこそある……ということが完膚なきまでに立証されるという意味で、今作の意義は大きい。世界最大の闇を鳴らすバンドの、最もソリッドな衝動のかたちがここにある。(高橋智樹)
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