この人の声は、哀しく、優しい

カレンO・アンド・ザ・キッズ『かいじゅうたちのいるところ -オリジナル・サウンドトラック』
2009年12月23日発売
ALBUM
カレンO・アンド・ザ・キッズ かいじゅうたちのいるところ -オリジナル・サウンドトラック
欧米メディアのクリティック・ポールで軒並み上位に食い込んでいるヤー・ヤー・ヤーズの『イッツ・ブリッツ!』。個人的にも今年もっとも強烈な印象を受けた作品のひとつだが、こっちもすごい。あらためてカレン・Oというシンガーの底知れなさを見せ付けられるような、スパイク・ジョーンズ監督『かいじゅうたちのいるところ』のサントラである。

ディアハンターのブラッドフォード、ヤー・ヤー・ヤーズのニック&ブライアンをはじめカレン周辺の才能が集結しているが、それ以上にアマチュアの子どもたちと歌うカレンの無邪気な迫力に言葉を失う。決して自己を最大限に主張するかのように声を張り上げているわけではない。むしろ「うたのおねえさん」として、子どもたちにすっかり溶け込んで楽しんでいる。それなのに、彼女が声を発した瞬間、彼女のなかに眠る「かいじゅう」が顔を出して、聴く者の心をガリガリと引っ掻きだす。バンドのときのギミックめいた装飾が取り払われたぶん凄みは増しているといっていい。USインディの誇る「かいじゅう」ことダニエル・ジョンストンのカバー“ウォーリード・シューズ”は本当に泣ける。(小川智宏)
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on