1mmの狂いもない神秘のかたち

相対性理論×渋谷慶一郎『アワーミュージック』
2010年01月06日発売
SINGLE
相対性理論×渋谷慶一郎 アワーミュージック
片や、一分の隙もなく磨き上げられた球体のようなポップ・ミュージックで、ポップ・ミュージックの在り方そのものを批評してみせた異才ユニット=相対性理論。片や、ATAK主宰としてアカデミック/カルチャー両側面から電子音響の世界を洞察し開拓する音楽家=渋谷慶一郎。渋谷のピアノ・ソロ・アルバムの収録曲3曲を、相対性理論のバンド・バージョン/渋谷&やくしまるえつこのピアノ&ボーカル・バージョン/さらに曲によってはムームのチェロ奏者としても活躍するヒルドゥルを迎えての3者共演、といった3つのフォーマットを駆使して再構築したのが今作。聴いた瞬間に身体が融解しそうなやくしまるのスウィートな声とメロディ。そして、ピアノやエレピの音の配置でもってダーリンとハニーの10cmの間隔に秘めやかな宇宙を描き出す渋谷の演奏……決して新しくも珍しくもない表現形態でこの両者はしかし、塩1粒で味を左右する熟練料理人のように、1mmの狂いもなく快楽と神秘の真芯を音で貫いていく。音楽が至上の魔法であることを教えてくれる1枚であることは間違いない。(高橋智樹)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする