ジョアンナの「全景」

ジョアンナ・ニューサム『ハヴ・ワン・オン・ミー』
2010年03月03日発売
ALBUM
ジョアンナ・ニューサム ハヴ・ワン・オン・ミー
全18曲で、しかも3枚組。さぞかし大作かと思いきや、全然違った。むしろ前作のほうが重厚長大に感じられるほど、リラックスして聴ける。聞けば、とくにコンセプト・アルバムというわけではなく、曲が溜まったからこういう形になっただけらしい。盤ごとの棲み分けはあるのかもしれないが、それより、どこから聴き始めても自然と彼女の世界に入り込めるような、解放的な作りが耳を惹いた。前回は、ヴァン・ダイク・パークス&アルビニ&ジム・オルークという豪華布陣が裏方を務めたが、今回はジムと、デヴェンドラ・バンハートらを手掛けるノア・ジョージソンがミックスを担当。麗しいハープ&ピアノの弾き語りから、気心の知れたバンド・セット、フル・オーケストラを配した壮大な組曲まで、彼女の「全景」を飾るようにさまざまな楽曲が並ぶ。なかでも印象的なのが、彼女の歌声。先日の来日公演でも感じたことだが、声の表情がとても柔らかくなった印象を受けた。デビューした頃の天真爛漫な愛らしさとも、前作で聴かせた鬼気迫るような“震え”とも異なる。そうした面も披露しながら、より深いところで歌や音と対話するような……とでもいうか。あらためて、凄い。(天井潤之介)
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