前作に収録されていたエンハンスト・トラックが、10年間というサイレンスのあとにようやく始まったかのように、トラック1がすんなりと耳に入ってくる。シャーデーに関しては、たとえ10年ぶりの新作でも「ブランク」という言葉を使うのは野暮だろう。彼女たちの活動は、新しいコンセプトと共に何かを生み出すものではないからだ。むしろ四半世紀の間全く切れることなく紡がれ続けている一本の糸、そんな存在である。もちろん、紡ぎ手の意思で太くも細くも出来る糸と同じで、サウンドは時代と共に繊細に変化を見せてきた。今作は今までで最もミニマルだし、リズムは2010年のそれだったりする。だがそれでも「不変のサウンド」という印象が強いのは、作品素材にシャーデー・アデュの愛のみを使うという姿勢を一切変えずにきたからだろう。『愛』という言葉を再びタイトルに含んだ今作は、英米はじめ各国のチャート1位を総なめにしている。「シャーデーは変わらない」と言いながら、それでも人はこの音楽に惹かれ続ける。音楽のために愛を用いるのではなく、愛のために音楽を用いている事実に、いつも胸を貫かれるからだ。(上田南)