極論すると、生身の人間味に溢れた、歌モノのロックンロール・アルバムだ。それをテナーがやると、こんなに斬新ですごくなる。新作が完成する度に「傑作」とか「さらなる進化」とか自他ともに語り語られるテナーだが、今作にそんな評価や比較は意味がないかもしれない。なぜなら、作品の世界観云々よりも何よりも、ここには等身大のまま裸で爆発するストレイテナーがいて、それが本当にカッコいいからだ。ただの最新型ロックンロールとしてラフに楽しみ、聴き飛ばしてもびくともしない懐の広さ、さらに強靭なグルーヴ、生々しい歌の力がある。
フクロウやロバ、消えていったクラムボンや瞬きをしない猫など、かつてなく様々な「生きもの(クリーチャーズ)」がうごめく楽曲群は、人間を風刺した鳥獣戯画みたい。物悲しくてダークでいびつな世界、というのはこれまでも描かれていたが、それを楽天的に魂こめて歌うのは、まさにブルースのカタルシスだ。ラスト《愛してるよ/ガールフレンド》という言葉なんて、そうじゃなきゃ出てこなかっただろう。テナーがまた新しくユニークな風をシーンに吹き込んだ。(井上貴子)