元ラグワゴンのジョーイ／スナッフのダンカン／KEN YOKOYAMAという米英日のパンク・アイコンがせっかく勢揃いしているのに、爆音曲の1つもないなんて！と天を仰ぐ必要はまったくない。今作はむしろ、そんな爆音の武装を解除したその下にあるしなやかでタフで優しいメロディの肉体美に触れることができる、しかも実生活では父親でもある3人が「子供を起こさないで」というタイトル通りにアコースティックの新曲を堪能することができる稀有な場だからだ。パンクは音量やBPMではなく、マインドに宿る……と言葉で言うのはたやすいが、それをごろっと作品の形で提示されると、思わず感激で震えてしまう。個人やアマチュアのレベルにまでデジタルが浸透し、パンクやロックが誰でも「鳴らせてしまう」時代になった今、荒ぶる魂が本当に世界と向き合うための武器は爆音でも絶叫でもなく、聴き手の血中に闘魂注入する楽曲でありメロディである……という昨今のパンク・アーティストの命題に、3ヵ国の精鋭が真っ向から回答した全8曲。限りなくメロディアスでにこやかな反骨心。ガキには真似できない闘争の形がここにある。（高橋智樹）