ひねくれているように見えてまっすぐ。照れているのかと思えば素直。ベボベ初の武道館公演を収録した本作からは、そんな「終わらない思春期」真っ只中で揺れ動くリアリティが、いきいきと溢れ出している。ここでもやはり、中心となるのが小出の歌であることに変わりはない。だが一方で、楽器陣の小技も随所で際立っている。特に自由度の高い関根のベース・ラインと、歌の裏でトリッキーな旋律を踊らせる湯浅のギターが印象的で、細部においてひねりの効いた演奏でありながら、全体としてストレートに響いてくる。さらには彼らの場合、歌詞の内容にもある種のねじれがふんだんに盛り込まれているわけで、事態はさらにややこしいはずなのだが、すべては見事に爽快感へと昇華される。かなり手間と工夫の感じられる料理なのに、食べると「おいしい！」としか言いようのない明快さがあって、だからこそ1万人の観客の熱狂がある。ちなみにこの翌日の下北沢GARAGEでの演奏を収めたライブCD『1235』も同時発売。ひとつの到達点をクリアした翌日早くも初心に返るとは、まったく油断ならぬ奴ら。（井上智公）