2009年のインディ・シーンにおいて、ダントツに話題をさらった前作『ハイファイ新書』。その不可思議な存在自体が一大現象となった相対性理論、3枚目のアルバムだけに、構えずにはおれない。『ハイファイ新書』リリース以降活発になった、アンダーグラウンドなアーティストとの交流や、やくしまるの課外活動を見るに、これまでより実験的でアカデミックな内容になったとしても驚きはしないのに、本作はリスナーが抱いている偶像的な「相対性理論像」に敢えて乗っかって、それをあっけらかんと提示してみせているような印象。これまでライブで披露していた曲が並んでいるのも、その印象をぐっと強くする。もちろんクオリティ・オリジナリティは申し分なく、適度にポップで適度に人懐っこく適度に中毒性があり、サブカルっこを刺激する言葉遊びも健在だ(特に、地球が滅亡した日に宇宙を漂いながら、「スピリッツ読みたい」と願う“小学館”は出色)。期待に応えるものを惜しみなく出しながら、読めない次の一手と野心が見え隠れする、スリリングなアルバム。ますますこれからが見逃せないバンドだ。(足達佳那子)