羊文学の1年10ヶ月ぶりのアルバム『D o n’ t L a u g h I t O f f』について語ってもらうこのタイミングで、塩塚モエカ(Vo・G)は初めて、メンバーを代表してひとりで、しかも普段自分が着ている服のままやってきた。そしてインタビューも、いつも以上に、何か特別な良いことを言おうという作為なく、ありのまま自らと羊文学の今について語ってくれた。代償を払わないと存在できる場所がない、
それでも死なないっていうことをいろんな理由で毎秒選んでる。
誰も面倒見て行くれないから、それを自分で面倒見ていかないといけない
前作『12 hugs (like butterflies)』以降、バンドはそれまでの一歩ずつ階段を上がるように音楽的成長と視野の拡大を続けてきた流れとは違う軌道に入っていて、これからどこへ向かうかはっきり語れる状況ではない。しかし、その間に羊文学が世に放った楽曲は、それぞれに人の心を刺し、癒やし、大きく救ってきた。そして、それらが新たに発表される曲たちと共にコンパイルされたこのアルバムは、自由で大胆な音楽的な広がりを見せながら、今の時代を生きる人々のモヤモヤや生きづらさに親身に寄り添う傑作アルバムになった。
なぜ、こんなすごいアルバムが、カオスとも言える状況から生まれたのか、そのリアルを語るために塩塚モエカはひとりでやってきたのだった。
インタビュー=古河晋 撮影=zero wang
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より抜粋)
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