活動15周年を迎えたEveにとって最大規模のアリーナツアー「Under Blue」を観て、Eveがライブを通してこんなにも私たちの記憶に眩い光跡を残し、ライブが終わったあとの人生に寄り添ってくれる存在であることを改めて実感した。
Eveのライブでは、曲は受け取るものではなくて、「曲の中に自分が存在している」という感覚になる。音源で聴いているときはゲームのプレイヤーだった自分が、ライブが始まるといつの間にか画面の中に入り込んでいて、そこにはプレイヤー視点では見ることのできなかった画面外の景色がどこまでも広がっている。それはEveが創り上げた、人間も人外もなんでも受け入れるフィクションの世界なのだが、ただ私たちにとって都合のいいだけの楽しい空想世界ではない。嬉しくて流す涙も苦しさを紛らわすための笑顔も、単色では描けない様々な感情が渦巻いた世界だ。自分自身がどんなことを考えていたのか、何に悩んでいたのか。ライブという空間の中でEveの楽曲世界と自分の心を照らし合わせると、自分が壮大なRPGの主人公のように感じられて、混沌とした現実世界で生きるのもなんだか悪いものではないと思えてくる。だから、Eveのライブでは「その空間に身を置くこと」が尊い体験として我々の記憶に刻まれていくのだ。
今回の別冊特集では、「Under Blue」のファイナル公演を超ロングレポートで楽曲ごとにひもといていく。さらに、Eve本人の直筆メッセージと、これまでの『ROCKIN’ON JAPAN』でのインタビューからEveの音楽やライブに対する想いが溢れた象徴的な言葉たちを抜粋した「Eve Words Chronicle」をお届けする。Eveと一緒に「Under Blue」という音楽の深海に潜ったこの記憶が、我々が人生の葛藤の最中にいるとき、必ず強力な味方になってくれるだろう。
文=天野史彬 撮影=Takeshi Yao
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より抜粋)
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