破壊か、再構築か

レディオヘッド『ザ・ベスト・オブ(2CDエディション)』
2008年05月28日発売
レディオヘッド ザ・ベスト・オブ(2CDエディション) - ザ・ベスト・オブザ・ベスト・オブ
最初は違和感を強く感じたリリースだった。ベスト盤というある程度キャリアを積んだバンドならお約束の流れが奇異に感じたのは何故かと言えば、レディオヘッドのキャリア、彼らのアルバムが一歩一歩の「過程」自体に強烈な意味を孕んでいるが故に、ヒット曲のコンパイルという過程を無視した並びによって総括されることは、レディオヘッドの本質と矛盾した作業でもあるからだ。

しかし同時にこれは非常に面白い作品である。通常盤1枚組の17曲を聴くと、第三者(本作のリリースにメンバーは一切関与していない)が客観的に判断した末の秀逸な並びにも、熟慮したのに失敗した並びにも聞こえる。時系列を無視した本作の収録曲は、『ザ・ベンズ』からの6曲が突出して多い。『パブロ・ハニー』から『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』に至る6枚の楽曲、それぞれ独自の世界を持ち、整理されることを拒む手ごわい17曲を繋ぐブリッジの役割を『ザ・ベンズ』の楽曲が辛うじて果たしているようにも聞こえる。つまり、「ニュートラルなレディオヘッド」として機能しているということだ。過程からは見えなかったものが、確かに見える。(粉川しの)
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