まがらない人の歌

トータス松本『マイウェイ ハイウェイ』
2010年09月08日発売
ALBUM
トータス松本 マイウェイ ハイウェイ
本作から浮かび上がるのは、「トータス松本」という魅力的なアーティストの生き様を示す大きな背中だ。彼が日々思っていることが飾ることなく伝わって来る印象だ。「大きな背中」と書いたが、「自信に溢れている背中」ということでは全然ない。なぜなら本作の歌から浮かび上がるのは迷いと不安だらけな姿。だらしなさも少なからず抱えた人物像だ。しかし、人生の掴みどころのなさ、訳の分からなさ、答えのなさを、しっかり受け止め、良くも悪くもこうなってしまった今の自分、心から大切だと思える人やモノを精一杯抱き締めながら明るく今日を生き、明日へと進もうとする意思が鮮やかに滲む。そう物語る背中には言い訳も愚痴もない。「逃げないよ」という決意だけがある。誰もが多かれ少なかれ抱える迷いをスッキリ晴らす答えや教訓が示される曲達ではないが、「ボクもこの先ずっとグダグダ迷うとするか」と思える勇気をくれる。“ストレイト”も“マイウェイ ハイウェイ”も、ちょっととぼけた“よしゃいいのに”すらもそういう曲だ。素晴らしい。最高のブルース、ソウル、ロック・アルバムだと思う。(田中大)
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