トミー・ゲレロの心の中

トミー・ゲレロ『リヴィング・ダート』
2010年09月08日発売
ALBUM
トミー・ゲレロ リヴィング・ダート
1年前の前作におけるややダークでスピリチュアルな感触にも驚かされたが、今回はその驚きを更に凌ぐものになった。一聴して、これが本当にあのトミー・ゲレロかと思ったほどだ。すべてが白紙の状態でスタジオに入り、5日間で完成させたというアルバム。彼流の即興ドローン作品とでも呼べばいいだろうか。サンプラーやループ・ペダルを駆使して、一発録りのような形でレコーディングは進められたらしい。でも、行き当たりばったりのやっつけ仕事などではなくて、ここには一貫した彼のマインドが描かれている。

曲調は前作を凌ぐダークさで迫り、かつての彼のイメージにあった西海岸の陽光を浴びる朴訥とした曲調はほぼ皆無だ。この点では前作を遥かに凌いでいる。ループするビートとダブのエッセンスはもともとの持ち味だけれど、それにしてもインストのメロディがとことんダークなのだ。つまり、即興というコンセプトに身を置いて、直感的に弾き出された心象風景がこういう色彩だった、ということなのだと思う。その取り繕いようのない剥き出しのマインドへとズブズブ呑まれる。メタモのステージが俄然楽しみだ。(小池宏和)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on