一人の贅沢な時間

フラン・ヒーリィ『レコーダー』
2010年09月22日発売
ALBUM
フラン・ヒーリィ レコーダー
やっぱこの人は根っからの「歌うたい」だな、とつくづく思う。自分の歌/歌声の心地よいあり方、その魅せ方というものを心得ている。そう、このソロ・デビュー作を聴いて唸らされた。一人になったからといって、ギターをラップトップに持ち替えたり急にアフリカに飛んだりといった奇抜なことや下手な冒険はしない。「トラヴィスから離れて、慣習を壊す」という意味を持たせたタイトルとは裏腹に、これはやはり、トラヴィスのそれと遠からず地続きのものだろう。アコースティック寄りのミニマルなアレンジで表現された、素朴な味わいの歌ものアルバム。いや、だからこそフラン・ヒーリィというアーティストの魅力をあらためて深く伝えて余りある、そんな作品になっている。パティ・スミスやアントニーを手掛けたエメリー・ドビンスをプロデューサーに迎えたのも象徴的だ。ポール・マッカートニーのゲスト参加(※ベースで)も話題だが、個人的にはニーコ・ケースとの共演曲に惹かれた。ゆったりとしたカントリー・ロック調に、ニーコのナチュラルな歌声と2人の澄んだハーモニーが抜群に映える。今後も継続的な活動を期待したい。(天井潤之介)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on