8月にリリースされたアルバム『新世界創造記・前編』に続く後編。《飛べるはずない仕組みの両手/それでも僕らその手合わして/夢が叶うように願えるから》《飛べない僕の目に映る/愛すべきこの美しき世界/今ここに立ってる》と歌う“新世界”や、心からはみ出さんばかりの想いをなんとかして伝えようとするロマンティックな“愛のカタチ”など、強いきらめきを持つ曲から作品ははじまる。一方で、『前編』よりもセンチメンタルなトーンが交じった、新しい出発を歌った曲も多い。誰かと離ればなれになるほろ苦い思いや、新しい道をひとりで歩きだす時の期待と不安のマーブル模様が、ピアノ・サウンドで鮮やかに、ドラマティックに表現される。心ときめくというよりも、哀しい成分が多い新しい出発の時に、背中を押してくれる曲ばかり。前編でのラスト・ソング、“ティンカーベル”で歌った「君が笑う場所」「涙のない場所」へと踏み出していくための作品、といったところだろう。前編・後編の2枚の曲で、現在・過去・未来の心の在り様を丁寧に描いているアルバムになっている。(吉羽さおり)