名人芸二乗

ベン・フォールズ/ニック・ホーンヴィ『ロンリー・アヴェニュー』
2010年10月13日発売
ALBUM
ベン・フォールズ/ニック・ホーンヴィ ロンリー・アヴェニュー
『ハイ・フィデリティ』で音楽ファンにはおなじみの英作家:ニック・ホーンビィが書き下ろした歌詞に、ベン・フォールズが音楽をつけるというこのプロジェクト。両者が互いの作品のファン/友人同士であるのはもちろん、人生のビタースウィートな機微を、時にひねりの効いたユーモラスな視点(ルーザーのそれ、ともいうが)から、また時に率直に切り取ってみせる両作家のフォロワー層が近いであろうことを考えても、ずっぱまりの好企画だと思う。

散文執筆とは異なる作詞という作業に、音楽のない状態で取り組んだニックも苦労しただろう。が、他者の文体をメロディとサウンドという感覚言語に翻訳し、自らの世界に仕上げたベンの音楽監督としての力量はやはり光る(『ソングブック』内のベン・フォールズ項で、ニック自身「自分の職業にも拘らず、僕は好きな曲の歌詞にあまり構わない」と明言しているからOKでしょう)。曲調、テンポなど幅を持たせてはいるものの、ノリのいいポップ曲より、主役を食う勢いのオーケストラ&ピアノで綴られた、『~シルヴァーマン』以来の美メロを刻んだ王道バラッドの数々が聴きどころだろう。(坂本麻里子)
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