深瀬の瞳が揺れている理由

世界の終わり『天使と悪魔/ファンタジー』
2010年11月03日発売
SINGLE
世界の終わり 天使と悪魔/ファンタジー
ものごとは、どこかにピントを合わせるとそれ以外の部分のピントがボケる。人間にピントを合わせて世界を眺めると人間以外の生物の世界が見えなくなる。自分にとっての「正義」にピントを合わせるとその領域を侵す誰かの「正義」は「悪」になる。目に見えているものにピントを合わせると目でしかものが見えなくなる。言葉にピントを合わせるとメロディがボケるし、メロディにピントを合わせると言葉がボケる。

世界の終わりは、それを避ける。どこもボケないように、どこにもピントを当てない。

さあ、両目を閉じて。片方の目をリアルにピントを合わせて開き、もう片方の目をファンタジーにピントを合わせて開き、2つの像を立体的に掛け合わせてみよう。そのとき世界の全てに光が回る。『天使と悪魔/ファンタジー』は、そんなシングル。2曲とも四方八方どこから見ても満月の月みたいに全ての言葉とメロディが矛盾なく結びついた、ありえない感触の音楽。でも深瀬は《否定を否定するという僕の最大の矛盾は/僕の言葉 全てデタラメだってことになんのかな?》と葛藤しながら、さらにその先に足を踏み入れようとしている。(古河晋)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on