呪い、ではなく、祝福

神聖かまってちゃん『みんな死ね』
2010年12月22日発売
ALBUM
神聖かまってちゃん みんな死ね
おそるおそる聴いて驚いた。なんだ、これ、呪詛みたいなタイトルとジャケットに拘らず、人類への破格の祝福じゃないか! “ねこラジ”で家族に別れを告げ上へ上へ塔を登る猫も、“あるてぃめっとレイザー!”で《おしっこが 私漏れそうなのです》と叫び続けるお嬢様も、不条理な神を殺しに行く“神様それではひどいなり”も、とにかく全編から「自分らしく生きるのだ!」「僕は行くのだ!」という気高く熱狂的な自己肯定性が爆発している。ぐちゃぐちゃの世界を俯瞰した天使の溜め息のような『つまんね』と対照的に、今作は人間の怒りのエネルギーが強い生命力となって闇雲に爆発する。朝、通勤電車で聴いていると思わずぐっときて、でもなぜか元気になる。『みんな死ね』を聴いて元気が出てくるというややこしさこそ、彼らなりの不条理への復讐なのかもしれない。

世界に飲み込まれていく美しき諦念『つまんね』と、世界にくってかかる勇ましい勇気『みんな死ね』。この二枚のアルバムはつまり、寓話化された「死」と「生」を、かまってちゃんらしい生々しさで描いた異形の名盤だ。(井上貴子)
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