アヴリルって揺らがない

アヴリル・ラヴィーン『グッバイ・ララバイ』
2011年03月02日発売
ALBUM
アヴリル・ラヴィーン グッバイ・ララバイ
SUM41のデリックとの離婚を経て、最近は金メダリストの父親を持つモデルのブロディ・ジェンナー君と浮名を流しているアヴリル嬢、前作『ベスト・ダム・シング』以来4年ぶりとなる新作が到着した。アヴリルの音楽に宿るポップ・ミュージックの機能性の高さは昔から嫌いじゃない。前作からの大ヒット・シングルとなった“ガールフレンド”は、歌詞だけを見れば、ある意味何も言っていないに等しいが、だからこそ彼女の楽曲は、あらゆる理屈や御託から逃れたポップスになる。道徳的だったり情緒的だったりする甘ったるく重苦しいバラードなんかを聴かされるよりはずっといい。そして、全15曲(日本の初回生産限定盤は全19曲)を収録した新作では、そのアヴリルの特性が更に開花している。

《人生ずっとちゃんとしなきゃって思ってたけど そんなのもうどうでもいい 今はメチャクチャなのがいい 全然気にしない》というシングル“ワット・ザ・ヘル”の歌詞が象徴的だが、離婚というヘヴィな体験を経てもなお、彼女は徹底して意味を拒否する。アルバムには《あなたと一緒にいるのは楽しいわ だからそうやって生きてきた だけど 私はひとりでやっていけるの》という身も蓋もない一言もあるが、だからこそ、その音楽的反射神経は落ちていない。“ワット・ザ・ヘル”を手掛けたマックス・マーティン&シェルバックのコンビがリズム・ループを主体とした現代的な曲を提供する一方で、デリックがアヴリルのアーティスト性を広げるロック的楽曲を6曲手掛けている。その生真面目ささえ届かないからこそアヴリルはアヴリルたりえているのかも。(古川琢也)
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