ポール・マッカートニーのソロ作品では歴史的にも内容的にも非常に重要なファーストのリマスタリング再発が本作。ポールのソロ初期数作はジョン・レノンからも酷評されたこともあり、基本的に雑な作りの作品として点を辛くつけられるところがあるが、基本的にジョンがすでにビートルズ末期から自身のソロ・キャリアを見据えて準備も進めていたのに対して、ポールは土壇場までそれを拒んでいたという事情はもっと考慮に入れられるべきだろう。その土壇場で逆ギレ気味にリリースされ、それまで極秘だったビートルズ解散を世に知らしめ、ジョンを激怒させたのがこのアルバムで、内容はそれこそポールがほぼひとりで作り上げた音楽的断想の集まりだった。しかし、そのひとつひとつの断想に込められた感傷の大きさはどれもとてつもないもので、この時期のポールの感情日記ともなった、落涙を禁じえないトラックが満載されている。究極の宅録アルバムとの印象がこれまで強かったし、その印象はこれからも変わらないものの、今回のリマスタリングでは音の臨場感もかなり増していて、ポールの思いがより昇華されたような感動も受けた。(高見展)