ボビー・ギレスピーが参加した先行チューン、“ヒッツ・ミー・ライク・ア・ロック”の超キャッチーなレゲエ調を意外に感じた人は、この新作の全貌を目の当たりにしたら、さらに驚くかもしれない。スッカスカな点と線の遊戯が結果としてユニークすぎるファンクを生んだ『カンセイ・ジ・セール・セクシー』の異形から、オルタナティヴ・ロックの音圧とメロディを正しく表現した『ドンキー』の普遍へ、まるでアブストラクトな点描を平面の色彩に置き換えるような道を辿ったCSSの過去2作品は、それゆえに賛否両論を巻き起こすことになった。『カンセイ~』のユニークな個性と『ドンキー』のメジャー感を天秤に掛けて比較したくなる気持ちも否めなかったし、『ドンキー』のツアーのタイミングでラヴフォックスが疲労困憊でリタイアし、「次は自由にやる。もっと好きなだけ実験的にやりたい」と宣言したことからも、セカンドの方向性はやはり彼らにとって不自然だったのでは?という憶測も流れた。
しかし、そんな物語を受け継いだ本作における自由と実験とは、『カンセイ~』への先祖がえりなんかじゃ全くなかった。むしろ『ドンキー』の先の風景、あのアルバムで描かれた平面図を遂に立体へと置き換えた、過去最高にメジャーなCSSがここにはいる。オルタナ・ロックからさらにギタポ、ボサノヴァ、フォーク辺りまで自由に触手を伸ばしていくそのサウンドは、「ダンス・ロックの珍獣の既得権」を返上した上で、幅広いフィールドに改めてユニークなポップ・ソングを描いていこうとする意気込みを感じさせるものだ。このストイックな自由、ありだと思う。(粉川しの)
唯一無比と汎用性について
CSS『ラ・リベラシオン』
2011年08月24日発売
2011年08月24日発売
ALBUM